恐山温泉 宿坊 吉祥閣(宿泊)


↑宿坊の向こう側にも湯小屋(温泉)がもうひとつあります

寺山修司の「田園に死す」を観て以来「いつかは訪問するぞ」と心に決めていた地。秋田市出身で今だ何かと出没機会が多い為、津軽方面には随分馴染みがあるものの、何故か三沢、野辺地方面、ことに下北方面ともなると遥か遠くの異国の地みたいな感があります。

せっかく行くのだから絶対に宿泊!と決めていました。予備知識で一泊6千円位。ふむふむ、嬉しい価格じゃありませんか。出発の三日程前だったか、早速予約の電話をしてみる事に。すると電話の向こうで告げられた値段は衝撃の1万2千円!「いっっっいちまんにすぇんえんっっ!?」何でも最近、宿坊を建て替えたらしく、それに伴い値段も変わったと申し訳なさそうにおっしゃいます。一瞬躊躇いつつも、宿泊する事しか頭になかったので「おっ、お願いします」と予約しました。

当日、霧のかかるクネクネ山道を経て恐山菩提寺に到着。夕方だからか既に観光客の姿もまばらでした。入り口で宿坊泊である事を告げると「すみません、宿坊の方にも入山料をいただいております」と申し訳なさそうにおっしゃいます。ここで500円を支払い真直ぐ宿坊へ。周囲は今だ工事中で本当にできたてホヤホヤなんですね。

玄関をくぐるとピカピカの玄関ホールにスリッパがズラーーーッと並べられています。館内には香が焚かれプーンと良い香り。そして本日宿泊する客室へ。開けてビックリ、なんと、二間続きで広々ピカピカ。洗面台もふたつある。これは凄いっ!宿坊なので当然ながらTVはありませんが。それにしても広すぎる。なんとなく落ち着かず、取りあえず館内にある男女別の浴室へ向かう事にしました。

宿坊館内の男女別浴室は「ここは本当に恐山?」と思う程ゴージャス。なんと露天風呂まである。これだけ広い浴室を、たった一人で使うのは逆に怖い。夜に行った境内の湯小屋の方が全然怖くなかったゾ。湯は内風呂、露天風呂共に薄白濁で流し込まれる湯は結構熱め。ただ、なにしろ浴槽が広い為、湯に元気がなく「こなれ気味」な印象です。

つづいて境内の湯小屋へ。境内には、男性用「冷抜の湯」、女性用「古滝の湯」、男女入替え制「薬師の湯」、混浴「花染の湯」という四つの湯小屋があり、訪問時「花染の湯」だけは工事の為配湯がストップし、使われていませんでした。

まずは薬師の湯へ。白濁した湯に湯花が沈澱し、浴槽内の温度は適温でした。次に古滝の湯へ。こちらは先程の湯と違いほぼ透明。なんでも今日掃除をしたばかりで、湯のコンディションは最高との事。投入される湯はかなり熱く、しかたなく加水にて温度調節。窓を開けると一本数十万円だか数百万円するという巨大卒塔婆が見え、木造の風情ある湯小屋の造りと相まって、最高のお湯を楽しむ事ができました。

湯浴み後、境内の「地獄」をブラブラと散歩をし、食事時間になったので「大食堂(だいじきどう)」と呼ばれる食堂へ。ここへは浴衣は禁止で、普通の私服にて行かなくてはなりません。軽く100人は入られるんじゃないかと思える広さに、ギッシリと椅子とテーブルが並んでいる大食堂。ここで宿泊者全員が揃い一緒に食事をいただくのですが・・・なんと、その日の宿泊者は私を含め、たったの三人。他のふたりは男性で、各々一人訪問でした。広々とした大食堂にポツンと三人だけの食事。誰とも無く苦笑い。

ここでの流れは食前に「食事五観」を唱え、精進料理をいただきます。箸は夕食時に出されたものを自室に持ち帰り、再び朝食時に持参し使用するのが決まり。肝心の夕食は見た目も綺麗な精進料理で、デザートまでついて、なかなかの美味しさでした。(あまりに人が少なかったんで、とてもカメラで撮影する雰囲気ではなかったので、食堂および食事の画像は無し)

食後は再び「古滝の湯」へ。夜の鄙びた湯小屋での湯浴みは大変風情あります。この雰囲気は病付きになりそう。そうこうしているうちに、菩提寺でお勤めをしているお姉さん達が入って来ました。皆さん青森県内のいろいろな地域から泊まりがけで仕事に来ているそう。いろいろ楽しいお話しを聞かせてもらいました。その後部屋へと戻り、夜は消灯が早いし(22時消灯)特にする事もないので、早々に寝てしまった。

翌朝、朝からハイテンションなカラスの鳴き声に起こされ、早朝の極楽浜を散歩してみました。誰もいない境内は「これぞ恐山!」という雰囲気を満喫できます。

その後6時30分から本堂と地蔵殿にて朝のお勤め。本堂には北東北ならではの習俗「花嫁人形」が多数祀られていました。また、朝のお勤めでは地蔵殿での御本尊を間近に拝む事もできます。

その後朝食。そして朝風呂の「古滝の湯」へ。まだ朝も早いというのにもう観光客が来ていてビックリ。昼間は暑くなる恐山では、朝の涼しいうちに「お山めぐり」をした方がいいかもしれません。

1万2千円という値段は貧乏な私にはキビシかったものの、あれだけの施設と温泉、美味しい精進料理、朝のおつとめなど、有意義な経験となった事は確かです。お寺の方もみなさん親切で、とてもよくしていただきました。ここはまたぜひ、泊まりで再訪したいとこです。
(まぐぞー・2003年9月宿泊)

▼恐山山門(右側が恐山宿坊 吉祥閣)

▼恐山宿坊 吉祥閣外観

▼恐山宿坊 吉祥閣玄関ホール

▼恐山宿坊 吉祥閣玄関フロントまわり

▼宿泊した部屋(二間続きです)

▼部屋の洗面台はふたつありました

▼恐山宿坊 吉祥閣玄関大浴場「御法の湯」5時~22時入浴可

▼女性脱衣所

▼女性浴室

▼内湯浴槽

▼シャワーも充実

▼女性露天風呂

▼境内の湯小屋も入り放題

▼日帰り観光客のいない夜は静かに浸かれます

恐山温泉 宿坊 吉祥閣 簡易データ

むつ市大字田名部字宇曽利山3-2
恐山寺務所0175-22-3825
宿坊吉祥閣0175-22-3826
宿坊浴室の立寄りは不明
宿泊しました:一泊二食付き12000円+入山料500円
5月1日~10月31日開山(※冬期閉鎖)
訪問:2003年9月(泊)

恐山温泉 宿坊 吉祥閣 温泉分析概要

恐山8号泉 含鉄・硫黄-ナトリウム-塩化物泉 74.4℃(使用42℃)溶存物質計=2458mg Na=679mg(88.15mv%) Fe2=35.8 Cl=795(69.69) SO4=225(14.55) HCO3=255.7(13.02) CO3=20.7 HS=0.9 S2O3=8.2 H2S=0.1