はしご湯のすすめ秋田県の温泉


乳頭温泉郷 黒湯温泉
乳頭温泉郷 黒湯温泉

仙北市田沢湖生保内黒湯沢2-1
0187-46-2214
9時〜16時
冬期休業
500円→510円
宿泊しました
99年9月:旅館部一泊ニ食11,700円利用
06年9月:自炊部一泊素泊まり2000円+布団700円利用

訪問:99年9月(泊)、03年6月、06年9月(泊)



立寄りで一度は訪れた事があり、前々から泊まってみたいと思っていた黒湯温泉。連休のせいか旅館部は満室、お目当ての自炊部は空室ありという事で即予約する。宿へは夕方4時半頃のチェックイン。番頭さんに自炊棟の部屋まで御丁寧にご案内いただく。自炊部は自炊棟の他に離れが二棟あり、こちらの離れはグループや大人数のお客が割り当てられていた。もっぱら少人数客は本棟?に案内されるのかもしれない。

案内された自炊棟は6畳部屋にテーブルと布団のみがセッティングされている。そして目の前の廊下には専用のガス器具が一基置かれている。自炊をされる方はちょっとした調理場もあるのでそれを利用する事になる。調理器具や道具、食器などはある程度揃っていたが、調味料までは無かったような気がする。我家は食材持込の自炊はせず仕舞いで惣菜を買い込んできた。食材を保存しておく冷蔵庫も完備。それと部屋にはコンセントの差込口はないが調理場の片隅にいくつかある。これ何気に大事なのである。

黒湯温泉には数箇所にお風呂が点在しています。知名度の高い混浴露天風呂&内湯、男女別の内湯(女性浴室にだけ露天風呂あり)、そして旅館部の男女別内湯の三箇所です。今回は宿泊でしたのでたっぷりと黒湯を満喫しました。夕方過ぎ頃までは日帰り入浴のお客さんがひっきりなしに訪れて慌しく騒々しいのが現状。静かに湯浴みするならそれ以降がおすすめ。日帰り客も居なくなり周囲も暗くなってきて雰囲気よい。

まずは名物的な存在でもある混浴露天へ。木造の5-6人サイズ浴槽がそれ。かなりの年季が入り、使い込まれた屋根付き東屋風の露天は雰囲気だけは良いです。露天風呂から数メートルの所には湯畑があり、フツフツと湯が湧出しているのを見る事ができます。その湯畑より木枡を通じて引き湯、そのまま浴槽へ注がれているのが分かります。湯は白色半濁、弱タマゴ臭と噴気臭がするものです。湯口にて49℃の源泉を15L/min弱投入の掛け流し、浴槽内41℃。源泉と同時に加水用の塩ビ管もあり、湯浴み客が自由に加水する仕組みになっています。残念ながら源泉だけとはいかない状況です。内湯も併設されていて当然にこちらにも入湯する。露天同様に木造の5-6人サイズの浴槽は同じであります。源泉と同時に加水用の塩ビ管があるのも同じで、加水自由です。43℃の適温に調整されていました。

黒湯温泉のお風呂で一番に鮮度が良かったのは旅館部のお風呂です。自炊部の宿泊でも利用可能だったかはわかりませんが・・。旅館部の浴室はとても狭く感じる造り。というのは、浴室面積の8割を浴槽が占めているのでそう感じてしまうのかも知れない。洗い場スペースはとても狭いものとなっています。2×2.8mの木造浴槽。浴室は電球だったか?の照明が一つのみで薄暗い浴室である。こちらでは薄白濁、噴気臭に弱タマゴ臭とみょうばん刺激臭、弱酸味の湯が楽しめる。45℃の熱め調整されていて浸かり具合もなかなかです。源泉を20L/min弱を投入しての掛け流し。旅館部の湯は熱めなのであまり利用客が居ないのかも知れません。それによって新鮮湯だったのかも。

湯治部の宿泊棟を過ぎ、源泉が湧出している湯畑の先にあるのが男女別の内湯浴舎です。脱衣所の隣に浴槽が位置している造りで1.7×3.5mの木造内湯がそれです。お宿に到着してすぐに利用してみましたが、かなりの量の加水があり温度は39-40℃とぬるめ。湯治部宿泊者でやはり同感の方もいらしたようで、立寄り客が帰った後に、自分達で湯小屋の外部にある加水バルブを調整し加水量を少なくしているようでした。後ほど来てみると44℃ほどに回復しておりいい具合になっていました。湯浴み客がいると濁り湯、いないと半透明湯の状況です。弱焦げタマゴ臭、弱酸味。ここも立寄り時間終了後は湯浴み客も少なく静かに湯に浸かることが出来ますが、立寄り時間内だとかなり賑わい騒々しく、お湯も死んでいる。

お宿としての温泉や浴室の管理には少々問題がある思う。黒湯温泉に限らず乳頭温泉郷は昨今の秘湯人気の影響のせいか、どこの温泉宿も大人気の有様。昔の湯治場時代はどこかへ行ってしまったと言っていいほどで、完全な観光地になっている。
(06年9月湯治部宿泊の感想)

(三昧)



いまや秘湯の代名詞となった乳頭温泉。その最奥にある黒湯温泉です。日本全国より湯浴み客が殺到する知名度の高い宿ですが、私が湯治滞在した三十数年も昔は、観光とは無縁の静かな湯治場でした。今でこそ気軽に訪問できる黒湯も、昔の湯治滞在となると、それこそ引越しさながらに沢山の家財道具を持ち込み、まったく世間から隔離された日々を送るのです。勿論、立寄り入浴者などは滅多に訪れず、時折、乳頭山の登山者がフラッとやって来る程度でした。お宿では「新田さん」というおじいちゃんが住み込み管理され、湯治客の残したビニール袋などを干して大切に再利用されていたのを思い出します。寡黙で照れ屋な新田さん、そして明るく元気な運転担当のお兄ちゃんが何時でも迎えてくれた心の故郷的存在の黒湯です。

時代は流れ、私は99年に旅館部二泊、そして今回、三十数年ぶりに自炊部に宿泊しました。いやいや驚いたのなんのって、外観こそ以前のままの自炊部でしたが、板の間にビニールゴザだった部屋が快適な畳敷きとなり、そしてなんとも頼り無げな裸電球が、皓々と明るく輝く蛍光灯になっているではありませんか。

そしてなにより変わったのが湯治客の姿です。炊事場で魚をモクモクと煙を巻き上げながら大量に焼き続けるグループや(そのため廊下や部屋には魚油の臭いが大充満、布団や衣類にコッテリ臭いが付着)、夜遅くに大騒ぎで流しを使う、ビールを何度もドタドタと取りに走るなど・・。その昔、湯治客同士が静かに養生するために守られた優しい気配りや品位は残念ながら薄れつつあるようです。実は家も、もう二十数年以上も前に「お客の層が変わり落ち着かなくなった」との理由で、湯治場を黒湯から澄川温泉へ変えたのですが、その澄川ももうありません。物はなくとも美しい気配りの心があった昔。失ったものを懐かしがっても仕方ありませんが、やはり寂しいものがあります。

前置きが異常に長くなりましたが、今回泊まった部屋は、全部で三棟ある湯治棟のうち、炊事場のある木造二階建て。ちなみに過去湯治滞在したのも全てこの棟です。部屋は六畳の畳敷き、テーブル、ガスコンロ、布団セットが置かれています。角部屋だったので窓からの眺めはまずまず。唯一気になった点といえば、布団が重く湿っぽくカビ臭さかった事くらい。建物は昔のままですが、館内の要所要所が修繕され不都合な事はありません。以前は停電も当たり前でしたが、今はそんな心配ないようです。ただ、今となっては、あの橙色の電球も懐かしく感じられます。共同の炊事場には冷蔵庫、ガス、調理器具、食器が一通り。食材だけ持ってブラッと訪ねられる気軽さです。今回私達はスーパーで惣菜を買い込んだので自炊すらせずの気楽さ、特別な支度といえば、その辺の「湯だまり」で温泉タマゴを作った位です。

浴場は大きく分けて「混浴」「男女別」「旅館部」の三箇所あり、それぞれ離れた場所にあります。まずは黒湯の名物「混浴」ですが、ここには茅葺屋根の昔ながらの湯小屋に、露天風呂、内湯、打たせ湯があります。屋根掛けされた露天風呂は木造の4人サイズ。熱めの源泉が投入され浴槽内で薄灰白濁り。加水用のバルブもあり自由調整できる仕組み。スベスベ肌触りに優しい明礬噴気臭が心地よい湯です。脱衣所横に造られた内湯は露天風呂より鮮度が良く、最後の〆にジックリ浸かりこみました。外の打たせ湯はさすがにオープン過ぎて私はパス。ここは全ての時間帯において風情のある浴舎ですが、特にオススメは夜。ここだけは電気が開通した今も裸電球を使用しているので、仄かな橙色の灯りの下での湯浴みが楽しめます。私達はタイミングよく貸切状態でのんびり湯浴みを満喫できました。

お次は、男女別湯小屋へ。こちらには男女別内湯+女性側にのみ露天風呂が付いています。長方形木造り浴槽は内湯、露天ともに6〜7人サイズ。薄灰白濁りの湯は薄タマゴ臭に加え、口に含むと柔らかい明礬味がします。湯は、湯小屋の外で加水され、やや熱め〜適温に調整され浴槽へと流し込まれます。難点は湯温がイマイチ安定しない事。また、外来時間帯の午後は「湯なまり」が大きく気持ちの良い状態ではありませでした。どうしても立寄りしかできない場合は、なるべく早い時間帯に来るといいかもしれません。実はこの湯小屋、以前は裸電球使用で夜の湯浴みは大変風情あるものでしたが、06年訪問時は蛍光灯に変わってしまい、ちょっと残念でした。湯小屋向かいの打たせは貸切利用できるので、女性も気兼ねなく楽しめます。

最後に旅館部の男女別内湯ですが、ここが一番利用客が少ないのか、湯の状態は一番良いものでした。

今回は夏の訪問でしたが、個人的に黒湯が一番美しいと思うのはやはり秋だと思います。辺りの山々が真っ赤に色づき、浴室から見える景色はまるで鮮やかな絵画のようです。そして、ここは立寄りではなく是非宿泊していただきたいです。立寄り客のいない夜の風情を静かにゆっくり楽しんでみてください。きっと黒湯が好きになると思います。ただ、今回宿泊した印象としては、自炊部側の湯温や清掃面など少々管理が行き届いていない印象も。昔はひとりひとりが他の人を気遣い、暗黙のマナーを持って利用した湯治場ですが、今はそういう時代ではなくなったのかもしれません。残念ですが、お宿側がマメに手を入れないと、とことん汚れ乱雑になる御時世なんだと思います。
(06年9月湯治部宿泊の感想)

(まぐぞー)




混浴エリア



混浴露天風呂



混浴露天風呂浴槽



混浴内風呂




混浴すぐ近くの湯畑
ここから湯を引いている



旅館部浴槽(男性)
女性側もほぼ同じ造り




男女別湯小屋と湯畑



男女別湯小屋



女性内湯



女性露天風呂


男性内湯・半濁り時


男性内湯・完全白濁時



男女別湯小屋向かいの
貸しきりできる打たせ湯


男女別湯小屋近くの
湯畑


湯畑の金精様




自炊棟




部屋




各部屋に
ガスコンロがあります



炊事場


温泉タマゴをつくりました


自炊部別棟


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